喫煙とがんのリスク:関連するがんの種類とリスクの大きさ
喫煙とがんの話になると、注目されるのはたいてい肺がんです。けれどもCDCは、タバコの使用は体のほぼどこにでもがんを起こしうるとしています。全体像を知ると、禁煙にかかっているものの大きさの見え方が変わります。
がんによる負担の全体像
米国国立がん研究所(NCI)によると、アメリカでは喫煙とタバコの煙にさらされることが原因で、年間約48万人が早すぎる死を迎えており、その約36%はがんによるものです。CDCは、タバコを吸うことと他人の煙を吸い込むことが、肺がんによる死亡のほぼ10件に9件の原因になっているとしています。
発がん物質の仕組み
NCIは、タバコの煙に少なくとも69種類の発がん性物質があるとしています。タバコに含まれる化学物質の一覧をご覧ください。主なグループは次のとおりです。
多環芳香族炭化水素(PAH): ベンゾ[a]ピレンなど。DNAに結合し、その損傷が修復されないと変異を起こすことがあります。喫煙者の肺の腫瘍でよく変異しているがん抑制遺伝子TP53の変異もその一つです。
タバコ特異的ニトロソアミン(NNK、NNN): タバコにだけ含まれる強力な発がん物質です。
ポロニウム210: 煙に含まれる放射性元素です。
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド: 反応性の高いアルデヒドで、どちらもNCIの一覧に載っています。
部位ごとのがんのリスク
CDCとNCIは、喫煙が原因となるがんとして、肺、口とのど、喉頭、食道、胃、すい臓、肝臓、腎臓、膀胱、大腸と直腸、子宮頸部、急性骨髄性白血病を挙げています(NCI)。リスクの大きさは、部位によっても、どのくらいの量をどのくらいの期間吸ったかによっても大きく異なります。ここでは、保健機関が公表している場合にだけ数字を示します。
肺がん
喫煙に関連するがんの中心です。CDCは、タバコを吸う人は吸わない人より肺がんになる、または肺がんで死亡する可能性が15〜30倍高いとし、1日数本やときどき吸うだけでもリスクは上がるとしています。
- 禁煙後のリスク: NHSは、肺がんで死亡するリスクは10年後に半分になるとしています。CDCと2020年の米国公衆衛生総監報告書(Surgeon General's report)は、この半減を10〜15年としています。その後も下がり続けますが、30年たっても一度も吸ったことのない人より高いままです。
口、のど、喉頭
煙はこれらの組織に直接触れます。お酒も飲むと、リスクはさらに上がります。CDCは、口、のど、喉頭のがんの上乗せされたリスクが禁煙して5〜10年で半分になり、20年で非喫煙者に近づくとしています。
食道、膀胱、腎臓
CDCは、これらのがんのリスクは禁煙して約10年で下がるとしています。膀胱がんは、尿に排出される発がん物質と関連しています。
すい臓
CDCは、すい臓がんのリスクは禁煙して約20年で非喫煙者に近づくとしています。
子宮頸部
CDCは、子宮頸がんの上乗せされたリスクは禁煙して20年で約半分に下がるとしています。
胃、肝臓、大腸と直腸、白血病
どれも、CDCとNCIの喫煙が原因となるがんの一覧に載っています。白血病のリスクは、煙に含まれ、白血病の原因として知られているベンゼンと関連しています。
禁煙後、がんのリスクはどのくらいの速さで下がるか
NCIは、禁煙して数年以内に、吸い続けた場合よりがんのリスクが下がるとし、その効果は若くしてやめた人ほど大きいとしています。吸い続けた場合と比べたCDCのタイムラインは次のとおりです。
| がん | 禁煙後(CDC) |
|---|---|
| 口、のど、喉頭 | 上乗せされたリスクが5〜10年で半分に。20年で非喫煙者に近づく |
| 肺 | 上乗せされたリスクが10〜15年で半分に |
| 膀胱、食道、腎臓 | 約10年でリスクが下がる |
| すい臓 | 約20年で非喫煙者に近づく |
| 子宮頸部 | 上乗せされたリスクが約20年で半分に |
出典:CDC, "Benefits of Quitting Smoking"。禁煙後に前がん細胞が「消える」という主張については出典が見つからなかったため、ここには載せていません。
すでに診断を受けている場合: NCIは、一部のがんでは診断の時点で禁煙すると、死亡のリスクが30〜40%下がる可能性があるとし、禁煙は体の回復と治療への反応を助けるとしています。どの時点でも、やめる価値はあります。
量と反応の関係
がんのリスクは、1日に吸う本数と、吸ってきた年数の両方とともに上がります。CDCは、1日数本やときどき吸うだけでも肺がんのリスクは上がると指摘しています。安全な量というものはありません。
よくある質問
喫煙者の何%ががんになりますか?
示せる信頼できる一つの数字は見つかりませんでした。生涯のリスクは、どのくらいの量をどのくらいの期間吸ったか、そしていつやめたかに大きく左右されます。はっきりしているのは次のことです。CDCは、喫煙者は非喫煙者より肺がんになる、または肺がんで死亡する可能性が15〜30倍高いとし、NCIは、アメリカで喫煙が原因の早すぎる死の約36%はがんによるものだとしています。喫煙者の全員ががんになるわけではありませんが、リスクは吸う年数とともに積み重なります。
喫煙によるがんのリスクで最も大きいものは何ですか?
肺がんです。CDCは喫煙者のリスクを非喫煙者の15〜30倍としており、喫煙は肺がんによる死亡のほぼ10件に9件の原因になっています。ただ、喫煙は体のほかの少なくとも十数か所でもがんを起こし、それらを合わせると大きな数になります。
電子タバコに切り替えれば、がんのリスクは下がりますか?
完全に切り替えた喫煙者では、おそらく下がります。ただし、直接は測定されていません。電子タバコは何も燃やしません。イギリスの2022年のエビデンスレビューでは、電子タバコを吸う人ががんに関連する有害物質にさらされる量は、喫煙者よりはるかに少ないことがわかりました。けれどもNHSは、電子タバコは長期的なリスクがわかるほど長くは使われていないとしています。すべてのニコチン製品をやめることが、今も最も安全な選択です。