ニコチン離脱症状のタイムライン:脳科学で見る1日ごとの変化
かんたんな答え: 離脱症状は最後のタバコから4〜24時間後に始まり、3日目ごろにピークを迎え、その後3〜4週間かけて和らぐのが一般的です。脳画像では、ニコチン受容体が最も過剰になるのは約1週間後で、6〜12週間で非喫煙者の範囲に戻ります。きっかけによる吸いたい気持ちは、そのすべてより長く続くことがあります。
禁煙の初期にできることのうち、とても役立つのは、この先何が来るかを知っておくことです。知ったからといってつらさが消えるわけではありません。それでも「今は3日目で、だいたいここがいちばんつらく、いずれ終わる」とわかっているのと、先の見えない症状に耐えるのとでは、まったく違う体験になります。
この記事は、そのタイムラインを研究が測ったことだけで組み立てたものです。科学的な根拠が乏しいところは、そう書いています。
最後のタバコの前:依存している状態
ニコチンは脳のニコチン性アセチルコリン受容体に作用し、習慣的に吸う人ではこの受容体が非喫煙者より多くなっています。ニコチンの主な標的であるβ2を含む受容体を調べた脳画像研究では、禁煙して間もない喫煙者のほうが、一度も吸ったことのない人より受容体の量が多いことがわかっています。ニコチンは脳の報酬系にも作用します。その部分はドーパミンとニコチンの記事で扱っています。
タバコをやめると、日常的なニコチンに慣れた脳は元の状態へ適応し直さなければなりません。そのときに感じるのが離脱症状です。不快ですが、終わりがあります。そもそも脳がどのように適応するのかは、ニコチン耐性の話になります。
0〜4時間:高まり
ニコチンは血液からすばやく消えます。半減期は平均約2時間で、同じレビューによると、意味のある濃度は最後のタバコから約6〜8時間残ります。ニコチンが分解されてできるコチニンはもっと長く残り、半減期は約16時間です。
最初の数時間は、いつも吸う時間に感じるおなじみの引っぱられる感覚のほかには、ほとんど何も感じない人が多いです。
4〜24時間:離脱症状が始まる
ニコチンの離脱症状に関するレビューは、離脱症状が始まるのは最後のニコチンから4〜24時間後としています。挙げられている症状は標準的な7つで、イライラ、不安、気分の落ち込み、集中しにくさ、空腹感の増加、睡眠の質の低下、落ち着かなさです。
吸いたい気持ちは波のようにやってきます。NHSによると、吸いたい気持ちはたいてい数分、長くても約15分で収まります。正確に時間を計った研究はありません。
CDCは、24時間で血中のニコチン濃度はゼロになるとしており、離脱症状の研究ではやめた後に心拍数が下がることが測定されています。
1日目:急性期の始まり
多くの人にとって、離脱症状がはっきり感じられるのは最初の丸1日です。
無気力。 ふだんの楽しみが色あせたように感じることがあります。これには無快感症(アンヘドニア)という名前があり、禁煙した1,122人に1日4回たずねた研究では、禁煙直後の、離脱症状がピークの時期に最も強かったことがわかりました。ニコチン置換療法(NRT)で軽くなりました。
ストレスホルモン。 やめるとコルチゾールが「急上昇する」と書かれているのを目にするかもしれません。研究が示すのは逆の方向です。ニコチンはコルチゾールを上げ、ある研究グループの研究は禁煙初期にコルチゾールが急に下がることを示しています。下がり方が急な人ほど、早く再喫煙していました。上がるのは、ストレスへの敏感さです。ある実験室の研究では、タバコなしの18時間でストレスに対する血圧の反応が大きくなり、集中力と気分が悪化しました。
睡眠。 睡眠研究では、タバコなしの最初の数夜に、覚醒、睡眠段階の切り替わり、目覚めが増えることと、日中の眠気が増えることが記録されています。これは測定されたよくある変化で、何かがおかしいというサインではありません。
2〜3日目:離脱症状のピーク
先のレビューはピークをおよそ3日目とし、その後3〜4週間かけて症状は弱まっていくとしています。NHSも同じことをもっと平易に述べており、症状はふつう最初の1週間、「特に最初の3日間」に最も強いとしています。
イライラ、落ち着かなさ、集中しにくさ、食欲の増加、途切れがちな睡眠が、すべていちばん強い形で重なると考えておきましょう。
3日目を越えることが大切です。 助けを借りずに禁煙した人の研究では、再喫煙の多くは最初の8日間に起きることがわかっています。この期間の具体的な対処法は、禁煙1週目を乗り切るガイドを参考にしてください。
4〜7日目:転換点
ピークを過ぎると、ほとんどの症状は和らぎ始めます。ゆっくりと、まっすぐではない形で。
受容体がいちばん騒がしい時期。 約1週間の時点で、先の脳画像研究では受容体の量が非喫煙者より有意に多い状態でした。喫煙でつくられた余分な受容体はまだ残っているのに、それを満たしていたニコチンはもうありません。研究の規模は小さいので、この時期は一定の値ではなく、今ある中での最良の推定と考えてください。
夢。 禁煙して1〜4週間の人の約3分の1が、タバコを吸う夢を少なくとも1回見たと報告しています。ふつうの夢より鮮明だと評価され、その夢を見たことは禁煙を続けられたことと関連していました。
2〜4週目:体の離脱症状が和らぐ
研究をまとめたレビューでは、怒り、不安、気分の落ち込み、集中しにくさ、短気、不眠、落ち着かなさといった主な症状は、最初の1週間のうちにピークを迎え、2〜4週間続くとされています。自力で禁煙した人では、こうした症状のほとんどが30日までに禁煙前の水準に戻りました。例外は空腹感と体重増加です。
不安については特に触れておく価値があります。不安は公式の離脱症状の一覧に入っていますが、完全にやめ続けた依存のある喫煙者101人の研究では、禁煙後に不安は高まらず、最初の1週間から下がっていきました。著者らは、ほかの研究で記録された不安の原因は禁煙そのものではなく、途中で吸ってしまうことにあるのかもしれないと示唆しています。
同じレビューは、やめたことで起こりうる影響として便秘、せき、めまい、夢が増えること、口内炎を挙げています。知っておけば、ほかに何か悪いところがあるのではと心配せずに済みます。
4〜12週目:受容体が元の範囲に戻る
4週間の時点で、先の脳画像研究では禁煙した人と非喫煙者の区別がつかなくなりました。著者らは、受容体の量は6〜12週間で非喫煙者の水準に戻ると結論づけています。最後の段階で脳画像を撮ったのは6人だけなので、これは推定であり、確定した値ではありません。
気分も変わっていきます。26件の研究をまとめたレビューでは、タバコを吸い続けた場合と比べて、禁煙後は不安、抑うつ、ストレスが減っていました。NHSは、こころの健康へのよい効果を感じ始めるまで、早ければ6週間としています。
3か月目以降
多くの人に残るのは離脱症状ではなく、学習された吸いたい気持ちです。特定の場所、人、気分とともにやってくる引っぱられる感覚です。タバコなしでその場面をやり過ごすたびに弱まっていきます。禁煙して1〜10年の元喫煙者を対象にした調査では、59%が過去1年に吸いたいと感じたことがあり、11%はそれを本当に困ることだと感じていました。
何か月目に脳が「完全に回復した」「一度も吸ったことのない人と区別がつかない」と示した研究はないため、この記事でもそうは言いません。
参考文献
- Hughes JR. "Effects of abstinence from tobacco: valid symptoms and time course." Nicotine & Tobacco Research, 2007. PubMed
- McLaughlin I, Dani JA, De Biasi M. "Nicotine withdrawal." Current Topics in Behavioral Neurosciences, 2015. PMC
- Cosgrove KP et al. "β2-Nicotinic acetylcholine receptor availability during acute and prolonged abstinence from tobacco smoking." Archives of General Psychiatry, 2009. PubMed
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- Hughes JR. "Tobacco withdrawal in self-quitters." Journal of Consulting and Clinical Psychology, 1992. PubMed
- al'Absi M. "Hypothalamic-pituitary-adrenocortical responses to psychological stress and risk for smoking relapse." International Journal of Psychophysiology, 2006. PubMed
- Benowitz NL, Hukkanen J, Jacob P. "Nicotine chemistry, metabolism, kinetics and biomarkers." Handbook of Experimental Pharmacology, 2009. PMC
よくある質問
ニコチンの離脱症状がいちばんつらいのはいつですか?
3日目ごろです。ニコチンの離脱症状に関するレビューはピークをおよそ3日目としており、NHSも、症状はふつう最初の1週間、特に最初の3日間に最も強いとしています。多くの人が、2日目と3日目を禁煙でいちばんつらい時期だったと話しています。
ニコチンの離脱症状(禁断症状)はどのくらい続きますか?
主な症状は2〜4週間続き、NHSは平均を3〜4週間、ときに数か月としています。特定の状況をきっかけにした吸いたい気持ちは数か月、まれに数年続くことがありますが、たいていは最初の数週間より回数も強さも少なくなります。
ニコチンの離脱症状は危険ですか?
ニコチンの離脱症状が、アルコールの離脱のようにけいれんやせん妄を起こすことは知られていません。体に危険というより、ひどく不快なものです。注意点が2つあります。1つ目は、気分の落ち込みが離脱症状の一つであることです。ある研究では、禁煙後の気分の落ち込みが再喫煙を予測していました。気分が大きく落ち込んだときや、うつ病になったことがあるときは医師に伝えてください。自分を傷つけたいと考えてしまうときは、すぐに助けを求めてください(よりそいホットライン(0120-279-338、無料、24時間)に電話できます。命に差し迫った危険があるときは119(救急車))。2つ目は、喫煙によって肝臓が一部の薬を分解する速さが上がることです。クロザピン、オランザピン、テオフィリンなどがそうで、やめた後は量を減らす必要があるかもしれません。ふだん飲んでいる薬がある人や、心臓やこころの病気がある人は、禁煙する前に医師か薬剤師に相談してください。
たくさん吸っていた人ほど、離脱症状のタイムラインは変わりますか?
時期はおおむね同じですが、たくさん吸っていて依存の強い人ほど、症状が強くなる傾向があります。先の無快感症の研究では、依存の強い喫煙者は9日目までそれを強く感じていました。禁煙のための薬は多くの人の助けになります。コクランレビューでは、どの形のNRTでも禁煙率が約50〜60%上がりました。また、4 mgのガムのような強い用量は、依存の強い喫煙者に最も役立ちます。