電子タバコが肺に与える影響:科学でわかっていること
肺は空気を吸うために進化してきたもので、エアロゾル化したプロピレングリコールや香料、微量の金属を吸うためのものではありません。これは道徳的な判断ではなく、研究が示していることを確かめる理由です。業界による過小評価からも、タブロイド紙のパニックからも離れて見ていきます。要点をまとめると、電子タバコは喫煙よりはるかに肺への害が少ないものの、無害ではなく、何十年も吸い続けたらどうなるかはまだ誰にもわかりません。
エアロゾルは「ただの水蒸気」ではない
電子タバコのエアロゾルは細かい液体の粒の霧で、プロピレングリコール(PG)、グリセリン(VG)、ニコチン、香料の化学物質、そして機種によっては加熱コイルから出る微量の金属を含んでいます。湯気ではありません。NHSは、電子タバコのよくある副作用としてせき、口やのどの乾き、口やのどの刺激、息切れを挙げています。
エアロゾルの行き先
電子タバコのエアロゾルはとても細かい粒子でできていて、肺の奥まで届くほど小さいものです。どこにどれだけ沈着するかは、機種、出力、吸い方によって変わります。高出力の機種は、1パフあたりのエアロゾルがずっと多くなります。タバコの煙と比べた沈着についてよく引用される具体的な数字は確かめられなかったので、ここでは繰り返しません。
香料の化学物質
電子タバコに使われる香料は食べるためのものとして認められていますが、吸い込むことについては何も示していません。
ジアセチルと関連する化学物質
バターのような風味を出す化学物質ジアセチルは、大量に吸い込んだ工場労働者に重い肺の病気(閉塞性細気管支炎、「ポップコーン肺」)を引き起こしました。フレーバー付き電子タバコ製品51品を調べたハーバード大学の研究では、47品からこうした香料の化学物質3種類のうち少なくとも1種類が、39品からジアセチルそのものが検出されました。電子タバコを吸う人が吸い込む量は、工場での曝露よりずっと少ないものです。それが何を意味し、何を意味しないかはポップコーン肺と電子タバコをご覧ください。
シンナムアルデヒド
実験室の研究では、シナモン系の補充用リキッド39品のうち20品に、ヒトの肺細胞に毒性を示す濃度のシンナムアルデヒドが含まれていて、電圧が高いほどエアロゾルの毒性も強くなりました。
加熱でできる副生成物
リキッドを加熱すると、もともと含まれていなかった化合物ができます。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレインなどで、出力が高いほど多くなります。ホルムアルデヒドは、国際がん研究機関(IARC)によってグループ1の発がん性物質に分類されています。実験室の研究では、電子タバコの蒸気に含まれる有害物質の量は、タバコの煙の9〜450分の1でした。
プロピレングリコールとグリセリン
どちらも水分を引き寄せる性質があり、それが電子タバコで口やのどが乾く理由のひとつです。長期的なエビデンスとしてもっとも近いのは、舞台用のスモークにさらされる劇場や映画の現場スタッフの研究です。エンターテインメント業界で働く人の研究では、喘鳴と胸の締めつけ感が鉱物油やグリコールのスモークへの累積曝露と関連し、スモークのいちばん近くで働く人ほど肺機能が低くなっていました。舞台用スモークは電子タバコではありませんが、注意する理由にはなります。電子タバコの副作用もご覧ください。
加熱コイルから出る金属
Environmental Health Perspectives誌に掲載された研究では、実際の使用者の機器を調べ、エアロゾルからクロム、ニッケル、鉛が、コイルに触れる前のリキッドよりずっと高い濃度で検出されました。健康上の基準値を超えるものもありました。著者は、電子タバコは有害な金属にさらされる原因になりうると結論づけています。
EVALI:何だったのか、何ではなかったのか
2019〜2020年に米国で起きた電子タバコ関連肺障害(EVALI)の流行では、CDCが2020年2月までに、入院または死亡した2,807件を記録し、そのうち68件の死亡が確認されました。患者51人の肺の液を調べた研究では、48人(94%)からビタミンEアセテートが検出され、データのある人の94%がTHCを使っていました。ビタミンEアセテートは、違法なTHCカートリッジの添加物でした。
つまりEVALIは、規制されたニコチン入り電子タバコの病気ではありませんでした。それでも、吸い込むには安全でないものが電子タバコに入ったら何が起こりうるかを示しています。信頼できる販売店でだけ買うべき理由です。
症状と肺機能
全体像は、見出しから受ける印象より複雑です。米国のPATH研究では、過去の喫煙を考慮すると、電子タバコだけの使用は喘鳴や夜間のせきとほとんど関連していませんでした。一方、実験室の研究では害が示されています。電子タバコの蒸気の凝縮液は、ヒトの肺の免疫細胞を傷つけ、細菌を取り込む能力を損ないました。電子タバコを吸う人の肺機能の研究は結果が分かれていて、英国の2022年のレビューは12か月を超える電子タバコの使用についての知見をまとめられませんでした。
回復の問題
電子タバコをやめた後の肺の回復を長期的に調べた研究はないので、タイムラインを示すことはできません。電子タバコの前にタバコを吸っていたなら、喫煙からの回復のタイムラインは最後の1本から進んでいます。わかっていること、わかっていないことは電子タバコをやめた後の回復タイムラインをご覧ください。
大量の電子タバコを長期間吸うことで肺に永続的なダメージが残るかどうかが、いちばん大きな未解明の点です。電子タバコは20年、30年分のデータがとれるほど長く存在していません。そう正直に言うべきです。
よくある質問
電子タバコは喫煙より肺に悪いですか?
ほぼ確実に、そうではありません。電子タバコはタールも一酸化炭素も出さず、英国の2022年のレビューでは、肺の病気に関連する有害物質への曝露は喫煙者よりはるかに少なくなっていました。ただし「喫煙より害が少ない」ことは安全であることと同じではなく、長期的な影響はわかっていません。電子タバコは体に悪い?をご覧ください。
電子タバコでポップコーン肺になりますか?
ニコチン入りの電子タバコが原因で閉塞性細気管支炎になったと確認された例を、私たちは知りません。また、電子タバコを吸う人が吸い込むジアセチル系の化学物質の量は、この病気を引き起こした工場での曝露よりはるかに少ないものです。それでも、こうした化学物質は多くのフレーバー付きリキッドから見つかっているので、避けるのが妥当です。
電子タバコをやめた後、肺が回復するまでどれくらいかかりますか?
測定した人はいません。やめて数週間のうちに、せきやのどの刺激が減ったと感じる人は多くいます。以前タバコを吸っていたなら、喫煙からの回復は最後の1本から数えます。3週間以上続くせきがあれば、医師に診てもらってください。
電子タバコで肺がんになりますか?
なるという直接のエビデンスはまだなく、発がん性物質への曝露は喫煙よりはるかに少なくなります。ただしエアロゾルには低い濃度で一部の発がん性物質が含まれ、肺がんは何十年もかけて進みます。NHSは、電子タバコは長期的なリスクがわかるほど長く存在していないとしています。
電子タバコの受動吸入は有害ですか?
吐き出されたエアロゾルには、紙巻きタバコの受動喫煙より低い濃度でニコチンと微粒子が含まれています。周りの人への長期的な影響は、まだよくわかっていません。子どものそばや、ほかの人がいる閉め切った場所では吸わないのが賢明です。
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